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畑から学ぶ、食の原点

ムソー社員農園「ミチカケ農園」

畑から学ぶ、食の原点

自然食品を扱うムソー株式会社の社員たちが、大阪府和泉市で土を耕し続けて約10年。
始まりは小さな貸農園から、今では約600坪の農園で、有機栽培を楽しみながら続けている。
中心メンバーのムソー食品工業株式会社の執行役員八坂健一氏に、この取り組みの歩みと学びを聞いた。


「わからない」が、始まりだった

─社員農園が始まったきっかけから教えてください。

 仕事柄、農家の方と話をしていても、有機栽培の大変さ以前の、「反」とか「ha」とか、面積の単位すらピンとこない。生産者の方々に様々なお願いをする立場で、このままではまずいなと思ったことがきっかけでした。農薬や除草剤を使わない作り方がどういうものなのか、どう難しいのか自分で体験してみたくて始めました。

─最初はどこで始まったのでしょうか?

 2015年頃、羽曳野市の貸農園から始めました。3メートル四方の畑で週末だけ農作業して、平日の水やりなどの管理は農園のスタッフがやってくれるところです。でも、やっぱり週末だけじゃ物足りない。もっと頻繁に畑に通えて、日々の管理まで学べる環境でやってみたいと思うようになりました。

 それで知り合いの方から貸していただけることになりました。最初の貸農園の200倍ぐらいの広さで、約600坪です。

─会社に対しては、どのように提案されましたか?

 社長に趣旨を話したら、すぐ「いいよ」と言ってくれました。ムソー株式会社としても「一次産業支援」という方針があったので、それに沿った取り組みとして認めてもらえた形ですね。

ミチカケ農園の様子(2025年12月末撮影)

土づくりと循環

─実際に農園を始めてみて、最初から順調に進んでいったのでしょうか?

 いやいや、失敗ばかりです(笑)。最初はマルチ(黒いビニールシート)を使って雑草対策をしていたのですが、ナメクジなどが多く発生したり、完熟していない有機物をすき込んで作物の生育に悪影響を与えたりしました。

 それで、マルチをやめて「草マルチ」にしました。そうしたら、雑草が土を乾燥から守ってくれるし、微生物も増えて、土の環境がすごく良くなってきたんです。最近は雑草が憎くなくなって、これが約10年の境地(笑)。自然農法をやっている取引先の農家さんが言うように、「自然と共生する」ってこういうことかなと。

─肥料はどうされているのですか?

 緑肥作物を使っています。レンゲなんかを植えて、花が咲いた後にそのまま土にすき込むんです。豆科の植物は空気中の窒素を根っこに取り込んで、それが土の肥料になる。昔、化学肥料がない時代に、田んぼでみんながやっていた方法ですね。

 肥料を足しすぎると、今度は虫が寄ってきてしまう。だから、緑肥で土を育てて、作物を植えて、また緑肥を入れて……という循環を作っています。

─ほかに気をつけておられることはありますか?

 輪作ですね。トマトやナスなど、同じ科の作物を続けて植えると連作障害が起きる。土の中に特定の病原菌や害虫が増えて作物の生育が悪くなってしまうので輪作や混植栽培に取り組んでいます。

 取引先の農家の方に栽培方法や管理方法をお聞きしたり、本などで勉強したり、色々と日々勉強しています。

─堆肥も皆さんで作っているそうですね。

 はい。雑草、落ち葉、会社で出るコーヒーかす、それから生ごみを混ぜて発酵・分解させて堆肥にして土壌改良に取り組んでいます。落ち葉や生ゴミがお宝に変わるというか、エシカルな取り組みにもなっていますね。

─農作業の大変さや苦労について、もう少し詳しく聞かせてください。天候の影響や、予想外のトラブルなどはありませんか?

 雑草との闘いですね(笑)。雑草に飲み込まれてダメになることもしょっちゅうです。でも、除草剤を使えば楽だとわかっていても、使わない。それが有機栽培の大変さですし、ムソー基準でもあります。

 日照りや台風もありますが、もともと田んぼだった土地なので、水が地下に蓄えられていて、水やりはそんなに必要ないんです。夜になると地下から水が上がってくるので、自然の恵みに助けられていますね。

─現在はどれくらいのペースで農園に通っているのですか?

 今は、固定メンバー3名と私で、ほぼ毎週末作業しています。夏場は暑いので、朝6時半ぐらいから作業して、2時間半ぐらいやって帰っています。そうすると、まだ午前9時とか。土日がすごく充実するんですよ。

 土に触れて、汗をかいて、鳥のさえずりを聴き、風を感じながら作業する。それがすごく気持ちいい。

─農園での作業を通じて、一番の喜びや楽しみは何ですか?

 最近は収穫よりも、育つ過程を見るのが楽しいですね。1週間前に種を植えたのが、こんなに大きくなっている。手塩にかけたものの成長を見るのが一番の喜びです。
 たくさん採れたら、会社で配るんですけど、それでようやく家庭菜園をしている人の気持ちがわかりました。育てる楽しみが一番なんですよね。

ミチカケ農園の作物

会社にとっての意味、そしてこれから

─この農園は、会社の新入社員研修でも活用されているとお聞きしました。

 毎年、ムソーの新入社員が畑に来て、1日作業をします。有機栽培がどれだけ大変か、体験してもらうんです。日本の農業の現状などについて研修を受けたあとに、草を抜いて。実際に汗を流すことで、取引先の生産者の方の苦労が少しでもわかってもらえたらと思っています。

 新卒の会社説明会でも、こういう取り組みをしていることを紹介すると、会社に興味を持ってもらえるようです。

─最後に今後について教えてください。

 すごく勉強になりますし、自然との共生を学べるので、これからも続けていきたいですし、社内にもさらに広めていければと思います。

 もし他の社員で興味がある人で、遠いから行けないというのなら、家の近くで小さく始めるのをおすすめします。やってみると面白いですよ、と伝えたいですね。

取材協力:八坂 健一(ムソー㈱/ムソー食品工業㈱)
聞き手・構成:勝又 大輔(㈱MUSOホールディングス)