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大地と向き合い続けることのできる社会に

MUSOグループの国内有機一次産業促進 ②

大地と向き合い続けることのできる社会に

志を持って有機農業を始めた人が、なぜ、続けられなくなるのだろうか。

農薬や化学肥料に頼らず、土を大切にしながら作物を育てる。そうした農業に取り組む人は、決して少なくはない。

一方、その多くが、事業として成り立たせるのは難しいという現実もある。手間も時間もかかる割に、規模が小さければ収入は限られる。また、規模を広げようにも、農地も機械もそのための資金の調達も一筋縄ではいかない。思いだけでは超えられない壁がある。加えて、少子高齢化で農業自体の担い手が減っている。

後継者がいなくなり、耕されないまま荒れていく農地。こうした風景が、静かに、しかし確実に日本の各地に広がっている。

この現実に向き合うところから、MUSOグループの新たな取り組みは始まった。


一軒の農家との出会いから

始まりは、東京の展示会での出会いだった。

数年前、むそう商事の担当者が、九州で有機農業を営む生産者と出会った。米・麦・えごまなどを約6haの耕地で育てていた農家で、農薬も化学肥料も使わずに農業と向き合うその姿勢は、間違いないものだった。

しばらくしてむそう商事との取引が始まり、米不足・米価高騰を機に、有機米の安定調達先のひとつとして取引量は増えていった。やがて、その農家の有機米の多くを引き受けるようになった。

やりとりを重ねるうちに見えてきたのは、この農家が抱える事情だった。

志は高く、作物も確かだ。それでも、このままでは農業を事業として続けていくのは難しい——それは、多くの小規模な有機農家に共通する現実でもあった。

ある荒れた大地の可能性

そんななか、行政主催の企業向け農地参入推進プロジェクトの話が持ち込まれた。

近隣の地域に、長く耕されないまま放置された農地が広がっている。行政もその再生を望んでいて、農業に取り組む担い手を探していた。

耕作放棄地そのものは、全国どこにでもある。農業の担い手が高齢になり、後継者もないままに放置され、やがて荒れていく——どこの地域にも起こりうる話だ。そうした農地は多くの場合、小さくかつ点在していて、まとめて引き受けても事業としての効率が悪い。だから手を出す者がないまま、荒れるにまかされていく。

けれど、今回は、みやき町・鳥栖市に広がる合計20haほどの農地が、それぞれひとまとまりに集約されている。整備さえ行われれば、有機圃場として再生できるかもしれない。そう思わせるだけの可能性が、その荒れた大地にはあった。

当プロジェクトの担当役員は、写真や資料だけでは判断がつかないと考え、自ら現地へ足を運んだ。雑木林のように荒れ果てた区域もあれば、人の手が入らなくなってまだそれほど経っていない区域もある。圃場の状態をその目で確かめ、行政の担当者とも直接顔を合わせて、再生に向けた計画や条件をひとつずつ確認していった。

覚悟について

圃場に事業としての可能性があること、そして、行政に再生を進める意思があること。それらを確かめたうえで、担当役員がその農家に問いかけた。

「この畑を全部、私たちと有機でやる覚悟はありますか」

行政が荒れた圃場を整えたところで、その場所で実際に農業を続けていくのは農家自身だ。どれだけ周りが支えたとしても、当事者の覚悟がなければ、再生は途中で止まってしまう。だからこそ、まずその一点を確かめる必要があった。

もちろん、農家の答えは決まっていた。

「入口」へのコミットメント

これまでMUSOグループが有機農家を支援してきたのは、主に「出口」を支える形だった。作物を買い取り、加工し、販路に乗せる。転換期間の売り先の不安をなくすことで、生産者が安心して有機農業に取り組める環境を整えてきた。

けれど、今回は、その支え方だけでは動かない現実だった。耕地を広げたくても、そのための機械も、新しい投資に踏み出す余力もない。単に「出口」を用意するだけでは足りないことが明白だった。

そこで、むそう商事は、これまで踏み込んでこなかった領域にまで関わることを決めた。営農に必要な農機具を揃えて農家に提供し、収穫した作物は全量を買い取る。農家が、耕せる場所を広げ、経営として立っていけるところまで伴走する。

「出口」を確保するプロジェクトから、農業そのものが成り立つ環境を一緒につくるコミットメントへ。「入口から出口まで」という言葉が指すものが、ここでひとつ深くなった。

その先にある「出口」

こうして育てられた有機栽培の米や小麦は、MUSOグループが引き受け、さまざまな形で消費者のもとへ届けられていく。

米は、信頼できる加工メーカーによって煎餅や味噌といった加工品となり、海外の食卓へ。日本の有機食品への関心は、いまや世界に広がっている。

小麦は、むそう商事が手がけるパン工房から、ムソーの販売網を通じて、全国の小売店へ。国産有機小麦だけでつくるパンが、全国各地の食卓に届いていく。

産地で育まれたものが、加工を経て、日本国内の食卓にも、世界の市場にも届いていく。ひとつの畑から始まったものが、いくつもの出口へとつながっていく。その流れを一貫して担えることが、MUSOグループの強みであり、この取り組みを支えている。

人が大地に向き合い続けられるように

この取り組みが目指しているのは、耕作放棄地の再生だけではない。

志を持って農業に取り組む人が、事業としてきちんと成り立たせることができる。大地に向き合い続けられる。そうした環境をつくること。それが、この取り組みの根っこにある願いだ。

圃場の再生を起点に、農家が自立していける道筋をつけ、作られたものが消費者のもとへ届く流れをつくる。それらを事業として組み上げていくこと。手間も費用もかかる、決して平坦な道のりではない。

そして、この取り組みもまた、まだ始まったばかりだ。

整えるべき大地も、これから育てる作物も、その先の販路も、多くはこれからの歩みにかかっている。それでも、こうした一歩の積み重ねの先にこそ、MUSOグループが掲げる願い――「人、地域、そして地球へ、いのちの和をみんなとむすぶ」――は、少しずつ現実の形になっていく。

会社HP(外部リンク):株式会社えこびと農園

取材協力:岡田 泰典(㈱MUSOホールディングス、㈱むそう商事)
構成・文:勝又 大輔(㈱MUSOホールディングス)